「石垣島ツーリング日記」2/2



(3日目)
 朝一番、空にはまだオリオン座が輝いている中、ぼくは旅立つ。北の岬で朝日を拝むのだ。そしてその勢いで島を一周する計画だ。寒い寒いといいながらバイクを飛ばす。朝日が出るまでの辛抱。石垣の港街を通り抜け、昨日朝日を拝んだ白保を越えると、家も少なくなり代わりに牧草地が広がるようになる。牛に挨拶しながら進んでいくと、島で初めて50キロの道路標識が現れる。日の出と競争しながら少しでも遠く、北へ北へと向かう。 空が朝焼けで真っ赤に染まる。もうそろそろ限界だ。今度はビューポイントを探して走る走る。もう少しで玉取崎展望台というところにある峠の頂きで朝日が出てくる。グットタイミング。真っ赤な朝日が水平線から昇っていく姿はどこで見てもいいもんだが、やっぱり南国で見ると気分が違う。
 さあ、次の目標は島一周だ。まずは島の北端、平久保崎灯台へと向かう。北へ向かえば向かうほど牧草地ばかりの景色がひろがり、まるで阿蘇かモンゴルかという感じだ。北端の岬へ向かって、小さな山がまるでゲルのようにポコンポコンと並んでいる。ゲルまんじゅー、と叫びながら走っていくと、ようやく灯台に到着。切り立った断崖なのだが、下に見える海は青く透き通っていて、飛び込みたくなるぐらいだ。そこをぐっとこらえて、残りの半周に旅立つ。


 途中に白い浜が見えた。ここでバイクと白い浜といった写真を撮りたいなと思い、乗り入れる。するとわずか2、3メートルでスタック。おーっ、モンゴルの再現だ! とへんに喜んでしまう。さらにアクセルを吹かして砂を巻き上げ、バイクの後輪を埋めていく。できた。原付が一人で立った。き・ね・ん撮影だっ、とファインダーを覗くと、バイクの向こうに何やら埋まっている。乗用車だ。乗用車がタイヤの上まで埋まっている。右のドアは砂に埋まって開けられなくなっている。開けっ放しの左のドアから脱出したようだ。おー、これこそ椎名誠の鮫腹海岸だあー、と一人喜ぶ。
 島の西側を快調に走る。日が昇り、風が心地よくなる。昨日訪れた米原キャンプ場にさしかかる。ここからはもう知っている道なので、冒険旅行は終わりだ。一周110キロ、4時間の旅だった。


 昼からは石垣島から最も近い島、竹富島へ行く。船に乗って10分程で到着。いきなり呼び込み看板を持った一団に歓迎される。一番近くにいたレンタル自転車友利のお兄さんに着いていく。
 自転車を借りて、いざ出発。雲一つない真っ青な空。背丈ほどの草が生い茂る中を、眩しく光る白い道が走っている。そこを自転車で走っていると、近所の森や池を探検していた小学生の頃に戻ったような気分になる。石垣島より強い日差しが、焼けたての体をチクチクを刺激する。痛い、痛い!
 コンドイビーチに到着。浜に出て、その風景を前に立ち尽くしてしまう。真っ青な海と真っ青な空が水平線で解け合い、その境目が判らない。真っ白な砂浜に照らされ、眩しい光の中で幻を見ているようだ。この景色こそぼくが探し求めていた南の島の風景だった。限りない青に心を奪われ、ふと我に返る。この風景どこかで見た…。そうかモンゴルだ!この海が草原なら、まさしくモンゴルの風景なんだ。いいなあ、こういう風景大好きだ。 うれしくってニコニコしながら、次は西桟橋へ。突端が崩れている桟橋は、周りの風景にとけ込んでいて、なかなか味がある。自転車を入れて写真を撮ると、絵葉書みたいな構図になる。自分以外に誰もいない、静かな世界。この島に住みたいなあと思った。
 自転車屋のお兄さんに、真夏の暑さはどのくらいなのかと聞くと、日なたで58度にもなるという。まさに天国に近い島…。
 必ずまた訪れるぞと誓い、竹富島を後にする。


 石垣島に戻り、昨日潜れなかった米原の海へ。先に「ちんすこう」というお菓子を買いに「やし屋」というお店に行く。
 お兄ちゃんバイクで廻ってるの、と店のおばさんが声をかけてくれる。まあ飲んでおいき、とさとうきびジュースをくれる。試食のお菓子もどんどん食べて、と薦めてくれる。旅先でのこういうふれあいは、いつまでも心に残る。目的のお菓子を手に入れて、米原の海へ。
 シュノーケルをつけて潜ると、珊瑚礁が待ちかまえていた。底地ビーチで見かけなかった魚がたくさん泳いでいる。魚の群れを追いかけたり、魚に縄張りから追い払われたり、原色のカラフルな魚達と戯れる。
 宿の帰って夕食。今日も元気だ、オリオンがうまい! 最後の夕食なので、石垣地ビールも飲んでみる。香ばしくってうまい。星空を見るつもりがビールのほろ酔いで沈没。

(4日目)
 おーっと寝てしまった。5時半に目が覚める。空にはオリオンが輝いている。白保の海へ向けて出発。同じ道は面白くないと、港寄りの道へ入り込むと迷ってしまった。これもまた面白い。おかげで、日が昇り始めたところで白保に到着。「うみ・そら・・・」の海を忘れないように目に焼き付ける。後ろからおはようございますと言われ、振り向くと皺だらけの元気そうなおばあちゃん。挨拶を返すと、うれしそうににっこり笑い、浜を歩いて行く。もう2度と会うことのないだろうおばあちゃんだけど、すごくうれしかった。
 まだ走っていない山側の道へバイクを走らせる。するとどうだ。「うみ・そら・・・」のエンディングでバスが走る海への一本道を走っていたのだ。ぼくにとってもエンディングの道。朝日に輝く海を見つめる。
 時間がたつにつれて雲が出てくる。風も強く涼しい。潜るのはあきらめてラストラン。海沿いを走って石垣の海に別れを告げる。

(エピローグ)
 レンタルバイク屋に到着。4日間の相棒に別れを告げる時が来た。石垣島400キロツーリング、やっとおまえのクセも判ってきたのになあ。楽しかったよ。いつかまた走りに来るからな。

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