「石垣島ツーリング日記」1/2

期間:97年9月23〜26日

(プロローグ)
 椎名誠さんの映画「うみ・そら・さんごのいいつたえ」を観てから5年。いつかあの青い珊瑚の海に行くぞ、と思い続けていた夢がついに叶う時が来た!

(1日目)
 石垣島に到着。タラップを降り石垣の地を踏むと、待ち受けていたのは南国の刺すような日差しだった。
 この旅の相棒、レッツUとレンタルバイクサンキューでご対面。モンゴルに行くまで自分のバイクにこだわり続けていたが、モンゴルをセローで走って以来その考えは消えた。レンタルとはいえ、これは出会いだ。旅の苦楽を共にする相棒との出会いなのだ。出会ってしばらくは、アクセルの反応はどうか、ブレーキの効き具合はどうかとか、いろんなことを探りながら、だんだんと仲良くなっていく。別れる頃には愛着まで湧いてくる。人との出会いと変わりはない。そう思うようになってから、レンタルバイクもいいなと思うようになった。
 慣れないバイクに慣れない道。ゆっくりとバイクを走らせる。少しずつバイクと馴染んでいく。
 宿に荷物を起き、さっそく海へ。富崎の海だ。あこがれていた青い海が今、目の前に広がる。海から吹く風が強い。波も強い。海に入ってみると冷たい。そりゃもう4時だもんな。ひと泳ぎして今日はあきらめる。あせらずとも、明日は南国の海が待っている。
 気を取り直して御神崎へ夕日を見にいく。北へ向かって初ツーリング。まだまだバイクに慣れなくてノロノロ運転。しかし、道路標識の速度表示も、30キロと40キロしかない。これは大きなバイクに乗ってもしかたないなあと思った。どうせ飛ばせないのだ。やっぱり島には原付がよく似合う、と独り言をつぶやきながら海沿いの道を駆け抜ける。


 原付に乗っている間、とにかくやたらとよく歌った。野球帽タイプのヘルメットなので歌は周りに筒抜けである。それでもかまわず歌っていた。出てくる歌は何故か松田聖子の歌ばかり。「あー、わたしのーこーいはー」と海パンに南海部品のTシャツにサンダルの出で立ちの兄ちゃんが、古い歌を歌っている姿は、さぞ危ない風景だったろう。「きーっすいんぶるーへーぶん」と歌いながら、そうかあの歌は、こういう景色の話だったのかと独り合点したのであった。
 御神崎に到着。断崖にそびえる岬の上から白波の立つ青い海を見る。雄大な景色だ。ゆっくり流れる時間を感じる。夕日を見て帰るつもりだったのだが、Tシャツに海パンでは寒すぎる。断念して引き上げる。
 帰り道、海に沈んでいく夕日をいろんな場所から見ることができた。これはこれでよかったなあと夕日を見つめながら思った。
 夕食時あこがれのオリオンビールを飲む。やはり沖縄といえばオリオンでしょ。
 星空を見るつもりだったのに、沈没してしまう。             

(2日目) 
 朝日を見るつもりが寝坊してしまう。原付を飛ばすと半袖では寒い。昇る朝日を追いかけ、白保の海へ。映画「うみ・そら・さんごのいいつたえ」の舞台になった海だ。先客がたくさんいた。浜で寝ている人もいる。思ったより小さな浜だ。水際へ向かうとナマコだらけなのに驚く。波はとても穏やかだが、遠くでごーっという海鳴りが、静寂の中聞こえてくる。
 朝飯を食って、今日は川平の奥、底地ビーチへ泳ぎに行く。10時を過ぎると日差しは痛いくらいになり、泳ぐのには絶好の天気になる。原付の気軽さで、前からやってみたかった、運転しながら写真を撮るというのを実行する。景色の飛んだ写真が撮れるとおもっていたのだが、実際は原付のスピードでは停めて写した様な景色しか撮れておらず、残念だった。


 底地ビーチには子連れの客と、地元の子供しかいなかった。数キロ広がる海岸は完全なプライベートビーチ。透明な遠浅の海にジャブジャブ入って行く。こんな浅いところにも魚がいる。うれしくってバシャバシャ走る。 地元の子供達が潜っている岩場へ、ぼくもシュノーケルを付けて潜る。珊瑚はあまり見られないが、南国風のカラフルな魚達が舞い踊る。竜宮城の世界。夢中で潜って時を忘れ気付いた時には、背中も足も真っ赤に焼けていた。あーヒリヒリする。
 昼飯を食ってまた潜る。潜り疲れたら白い浜でヤドカリと戯れる。三匹捕まえてヤドカリ競争させるが、三匹とも違う方向へ走り出す。
 なんか寒くなってきたなと思ったら、もう4時半。これはいかんと、今日見るつもりだった川平から米原キャンプ場へ。このキャンプ場はライダーの間では有名と聞いていたので行ってみた。米原の海も底地に負けず劣らずきれいだった。泳ぎたいのだが、さすがにもう寒い。浜茶屋の犬としばし戯れ、夕日とともに帰る。このあたりから見る夕日は、西表島へと沈んでいく。ぼーっと夕日を眺めていると背中と足がかゆくてしかたない。足は真っ赤に日焼けしている。
 今日もオリオンビール。ナマはうまい。
 星空を見るぞとはりきって今日は起きている。浜に出て空を見上げる。たくさんの星が出ているけど、モンゴルほど見えない。当たり前。でもあのモンゴルの星空を一度見てしまっているので、ちょっと満足できないのであった。


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