モンゴル・ツーリングレポート

「大草原の夢・鉄馬で駆けるモンゴル」(3/3)

この風景と出会えるから
どんなに眠くても早起き
(8月5日)
 眠たいのだが、隣のテントの目覚ましに反応してしまう。今日も日の出を見るぞーっと、起きあがる。テントを出るときれいな青空。早起きして良かった。

 朝日を見ながらイスに坐って一眠り。心地良い風が吹き、遠くで馬の嘶きが聞こえる。なんて贅沢な時間なんだ。

 今日は曇っているので、涼しくて気持ちいい。さあ最終日。はりきってしゅっぱーつ!

 それは気分良く丘越えの道を走っていた時のことだった。ぼくの後ろを走っていた秋元編集長が、突然ものすごいスピードで追い越して行った。何事かとバックミラーを見ると、黒くてデカい犬が、ワンワン吠えながら、ものすごい形相で追いかけてくる。しかもすぐ後ろだ。逃げたくても前のバイクが詰まっていて、これ以上前に出られない。秋元さーん、待ってくれー、と叫びながら必死で道を蛇行し、スピードを落とさないように走る。そのうち、犬の縄張りを越えたのか追いかけて来なくなり、ほっと一息。秋元編集長と顔を見合わせると、思わず笑いがこみ上げてきた。あー、恐かったけど、おもしろかった。

 一難去ってまた一難。バイクは気付かぬうちに、湿原へと突入していた。ハンパじゃないギャップにハンドルを取られる。仕方なく水たまりに突っ込むと、これがすごく深かったりして、バイクは踊りまくる。どこまで続くんだあ、と疲れが出てきたところで、奥村さんがスタック。ぬかるみにタイヤが取られてスタートできないようだ。またパリダカだー、と喜んで助けに行くと、ズボッとブーツが半分以上埋まり、抜けなくなる。自分がピンチ。ブーツの中に浸水してきて、これは大変と必死で脱出。再び足場を確認して、バイクを押す。アクセルを開けても、タイヤは泥を跳ね上げるだけで、どんどん埋まって行く。みんなでバイクを押してやっと脱出。バンザーイ。パリダカの偉大さを思い知る。

 続けてハプニング。昨日の宴会ではりきりすぎた足立君がダウン。顔色が悪く心配するも、日蒙女性陣の手厚い看護の甲斐あって、元気を取り戻す。足立君、少しうらやましかったぞ。

 湿原の最後に小さな川渡り。こけたら水浸しになるので、行けーと叫びながらアクセル全開でなんとか突破。一つ一つの関門をクリアしていくことが、やたらにうれしく、おもしろい。ところが、後続の秋元編集長のバイクが珍しくスタック。立ち往生しても笑顔を忘れない編集長であった。

 湿原を抜けこれで終わりと思っていたら、山岳コースが待っていた。ぼくの苦手な下りのカーブで、石がゴロゴロしている。危険なので、ポイントポイントで停止。余計に恐怖心が出てくる。滑りながらも、なんとか降りていくと、最後の難関が待っていた。道の真ん中を深い溝が通っていて、道を二つに分けている。一見危険そうに見える谷側の道が、実は簡単な道だったのに気付いた時には後の祭り。どうやっても、深い溝を横切らないと、皆のいる場所へたどり着けない。先行の奥村さんが溝に捕まる。残された安部さんとぼくで、走るラインを相談。まず安部さんが行く。そこだー、行けーとデカい声で応援すると、振られながらも、向こう側に無事到着。やったー、すごーい。よし、オレも負けないぞ、とアクセルを吹かす。イメージとはだいぶずれたラインを踊りながら走ったけれど、なんとかクリア。よし、やったぞ。

 緑の草原が途切れ、電柱が現れる。ダートも終わる時が来た。舗装路に出た時ぼくの旅は終わった。

 素晴らしい旅と充実した走りを噛み締めながら、7台のバイクはウランバートルへ向かった。ぼくの心の中で、それはウイニングランだった。

 
(8月6日)
 秋元編集長が税関で厳しくチェックされるという一幕もあったが、全員無事日本へ帰ってきた。

 モンゴルの青い空を駆けた仲間と、固い握手を交わし、お別れ。 いつかまたどこかで。

(OutRider 97年11月号に掲載)


砂煙を上げて進め進め!

近くで見るとスゴイ!
ゴツゴツした岩場の迫力

水場を突っ切れー!

楽しかったテント生活

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