モンゴル・ツーリングレポート

「大草原の夢・鉄馬で駆けるモンゴル」(2/3)

見事な朝焼け。冒険の一日が始まる
(8月4日)
 六時起床。日の出を見ようとはりきって起きる。誰も起きてないと思いきや、みんな起きてる。さすがはモンゴルに来るメンバーだけはある。秋元編集長などすでに山の頂にタルバガンのようにすっくと立ちはだり、日の出を待っていた。

 風の音しか聞こえない静けさの中で、緑の草原が少しずつ光を浴びながら目覚めていく。昼間見る鮮烈な緑とは違った少し赤みを帯びた草の色が心に残った。

 さあ2日目の出発。草原の落とし穴の発見も少し早くなり、バイクにも慣れてきて、立って乗る楽しさも判ってきた。余裕が出てきて、自分のペースで走れるようになり、随分楽になる。

 そんな時だった、あの風景と出会ったのは。地平線の彼方まで緑の草原は果てしなく続き、目の前一杯にどこまでも高く高く青い空が広がっている。ゴーグルに写る風景は、一割の草原と九割の真っ青な空。地平線から雲が沸き立つ。そんな景色を見ながら走っていると、涙が出てきた。ガイドの大島さんがモンゴルを初めて走った時、感激のあまり涙してしまった、という話を思い出した。高い高い青空に向かって走っている時、来て良かったと思った。本当に来て良かった。

 オレは今、空に向かって走ってる。
 地球に向かって走ってる。
 心のスクリーンにこの景色を焼き付けよう!
 素晴らしい景色の向こうにゲルは待っていた。馬乳酒をどんぶり一杯ごちそうしてくれる。ありがたいのだが、すっぱくて、そんなにいっぱい飲めない。続いて、噂のポラロイド撮影会が始まる。本当にたくさんの人たちが、入れ替わり立ち替わり、組み合わせを変えて現れる。子供たちの表情がとてもいい。リボン付けた可愛い子が、男の子だったのはおかしかった。

 ここでついに馬に乗る夢が実現。夢みたい、というのはまさにこのことだなと思いつつ、馬を走らせる。大人しくて、賢いヤツ。重たいだろうぼくを背負って走ってくれる。皆のいる場所からずっと離れて、二人っきりになり、馬と話をした。
「君に乗るために日本から来たんだよ。君と一緒に、大草原を走るのが夢だったんだ。ほんとにありがとう。」
 感謝の気持ちを込めて、馬の首すじを何度も叩いてやる。

 馬のたてがみが風に吹かれてる。目の前には、果てしなく続く大草原が広がっている。間違いなくぼくは、夢の場所に立っている。

 そこへ遊牧民が馬に乗って、すごいスピードで走ってきた。馬の群れを指差し一緒に来いと言っているようだ。トコトコと付いて行くと、一緒に馬追いをさせてくれた。自分の馬で、放牧されている馬を誘導するのだ。こんなにおもしろいことはない。右へ左へターンしながら、馬と追いかけっこしている時間は夢のように過ぎていった。

 ゲルの場所に戻ると、ラクダ試乗会になっていた。早速乗せてもらう。コブに捕まり揺られていると、ラクダの背骨がゴリゴリしていて痛かった。そばで秋元編集長がラクダを引いている姿は、まさに遊牧民そのものだった。

 ゲルを出発。草原に少しずつ砂が混じるようになり、ハンドルが取られる。特に砂地から発進する時が大変だった。踊るバイクを、うおーっと叫びながら力技で立て直す。スリルがあって楽しい。その時は必死だけど、落ち着いてからこけなくてよかったと、ほっとする。先導バイクのスフさんは、砂の上を滑るように走って行く。スフさんのように上手に走りたいなあ。

 砂と格闘しながら走るぼくたちの前に砂丘が立ちはだかる。ぼくの前を走っていた安部さんがスタック。パリダカだーと喜んで救出しに行く。ところが、砂に足をとられたバイクの重さは想像以上。重さと暑さで汗が吹き出す。ほんの数分のパリダカ体験で、バテてしまうとはなさけない。

 砂丘で一人元気な水上さん。一人で走り回っている。こけてもニコニコしているのでこっちも安心して見ていられる。笑いながらこけてる姿をみんなで見物。

 とにかく今回のメンバーの女性三人はすごく元気だった。こけて助けに行っても笑ってるもんなあ。その笑顔でこっちまで元気になってくる。

 その夜は川のほとりでキャンプ。夕食用の羊を解体中に、暴風雨がやってきてテントが吹き飛ばされそうになる。短い旅行なのに、モンゴルのダイジェスト版を体験しているみたいだねと、辻君と二人、背中でテントを支えながら話した。

 風雨もおさまり、十一時過ぎてからの夕食。毛皮を残して僕たちのお腹の中に消えてしまった羊くん、とってもおいしかったよ。この時、手にすり込まれた羊の匂いは、日本に帰っても残っていた。

 この夜、アルヒ(モンゴルの強い酒)で大宴会。


馬に乗る夢が叶って満面の笑顔

砂丘に挑む! バテたバテた

キャンプ地の川。増水で入れず

濁流に挑む! 足場がモロく危うい

何が釣れるか? 大物か?

女性トリオの夕涼み

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